「前にも同じことを調べたはずなのに、また一から探している」。設備保全や設計、品質管理の現場で、こうした経験はないでしょうか。
報告書や図面が保存されていても、何を手掛かりに、どの資料のどの記述を確認し、次に何を調べたのかまでは、担当者の記憶に残っていることがあります。
AnnoLinkは、この「調べ方」を、資料・検索語・根拠のつながりとして残します。有用だと判断した検索経路を蓄積し、別の担当者もたどって確認できるようにします。
検索履歴は、検索した言葉や開いた資料を振り返る記録です。検索経路は、何を手掛かりに、どの根拠を確認して、次の資料へ進んだかというつながりを残します。
検索履歴との違いは、次の調査をどこから始め、何を確かめればよいかを共有できることにあります。
検索履歴は、以前開いた資料を探し直したり、自分の作業を振り返ったりするときに役立ちます。一方、調査を引き継ぐ人には、「A.pdfの後にB.pdfを開いた」という記録だけでは、両者の関係が分かりません。
A.pdfの何を手掛かりにし、B.pdfのどの記述を確かめたのかを確認できることが重要です。
分析対象はフォルダ単位で指定します。すべてのファイルを一括して分析するのではなく、設備・案件・調査目的などに応じて対象のフォルダを選んで分析します。
例えば、ある設備の図面・仕様書・点検記録・過去の不具合報告書が入ったフォルダを分析対象にします。その業務に関係する資料の情報と、記録した検索経路のつながりを、調査や逆引きに活用します。
ここからは、架空の設備トラブルを例に説明します。
担当者が設備の点検メモであるA.pdfを読んでいるとします。そこに「ファン付近で異音がする」という記述があり、関連する過去の不具合を調べることにしました。
この検索経路を図にすると、次のようになります。
この検索経路がナレッジマップに残ります。
残したいのは、B.pdfというファイルの場所だけではありません。A.pdfの記述が次の検索につながり、B.pdfで関連する情報を見つけたという関係です。
さらにB.pdfに部品型番が記載されていれば、その型番を手掛かりに部品表や交換記録へ調査を進めることも考えられます。
検索した事実だけでなく、人が原文を確認し、有用だと判断した検索経路を残すことで、次の担当者に調査の入口を渡します。
なお、似た症状の報告書が見つかったことと、今回の故障原因が確定したことは別です。検索経路は、原因を判断するために資料を確かめる道筋として使います。
AnnoLinkでは、資料を検索し、検索結果のEvidence(根拠となる記述や位置)と原文を確認します。そして「このつながりは後で役立つ」と判断したときに、「検索経路を記録」ボタンを押します。
検索結果が10件表示されたからといって、10件すべてを組織のナレッジとして扱うわけではありません。確認して役立った検索経路を選んで残します。
実際の調査には、見当違いの検索や、開いてから「今回の条件には合わない」と分かる資料も含まれます。その検索履歴をすべて並べるだけでは、次の担当者が同じ試行錯誤を追い直すことになりかねません。
ただし、失敗した調査がすべて不要という意味ではありません。「この条件では、この原因候補を除外できた」という判断にも価値があります。除外した理由が次の調査に役立つ場合は、注釈などで補足します。
確認して役立った検索経路を選び、必要な説明を補って残すことが、次の人にも使いやすい記録につながります。
基本となる記録の流れは、次のとおりです。
検索経路を残す運用では、記録の負担も考える必要があります。検索するたびに「なぜこの言葉を選んだか」「何を考えたか」を詳しく入力する運用では、調査に加えて記録の負担も大きくなります。
設備トラブルへの対応中にも続けられるようにするには、有用だった検索経路を選び、必要な説明を補う使い方が重要です。
AnnoLinkは、普段の検索・原文確認の中から有用だった検索経路を残す使い方を基本としています。原文だけでは伝わらない着眼点や注意事項は、注釈で補います。
資料を検索して根拠と原文を確認し、「この検索経路は後で役に立つ」と思ったときに記録します。
検索経路が残ることと、人の頭の中にあった判断理由がすべて自動記録されることは同じではありません。資料のつながりと原文を土台にし、必要な説明を補うことで、記録の負担を抑えながら引き継ぎます。
検索経路を保存した後は、そこから関連資料をたどり、根拠を確認して次の調査に使います。
例えば、次の検索経路が残っていたとします。
「ファン」という検索語からB.pdfへ進んだ記録だけでは、なぜその資料が役立ったのか分からないことがあります。図のように根拠となる記述を確かめることで、異音と温度上昇に着目した調査だったと分かります。
AnnoLinkでは、検索結果のEvidence(根拠となる記述や位置)と原文を確認できます。以前の調査で残した検索経路は、次のように再利用します。
以前の結論をそのまま採用するのではなく、以前の調べ方を入口として、今回必要な確認を進める使い方です。
こうした検索経路の再利用は、複数の資料を調べながら判断する、次のような仕事で活用を考えられます。
過去に有用だった検索経路が、今もそのまま使えるとは限りません。設備の型式、運転条件、対象部品、資料の改訂などが異なる場合は、現在の条件と照らして確認する必要があります。
検索経路は、過去の判断を無条件に正解とするものではなく、その判断につながった資料を確認し直すためにも使えます。
図面番号や型番が分かっていて、目的の資料を一つ取り出せば済む仕事では、通常の検索で目的を達成できます。
Ctrl+FやOSのファイル検索でも資料は探せます。全文検索システムなら、複数の資料を横断して検索することもできます。
次の図は、目的の資料が見つかれば仕事を進められる場合です。
一方、原因や経緯を調べる仕事では、資料を読んで新たな手掛かりを見つけ、検索を重ねることがあります。その検索履歴には、見当違いの検索や、今回の条件に合わなかった資料の確認も含まれます。
次のような検索履歴をすべて追い直すだけでは、次の担当者にも同じ試行錯誤が必要になります。
AnnoLinkでは、その中から人が有用だと判断した検索経路を残します。最終的に見つけた資料だけでなく、そこへたどり着くための手掛かりと根拠を再利用することを目指しています。
前任者しか知らなかった「この資料を見たら、次にこちらも確認する」というつながりを、他の担当者も利用できる状態にしていきます。
フォルダ単位で分析した資料の情報と、蓄積した検索経路のつながりを逆引きにも活用します。
逆引きでは、「何が」「どのような状態なので」「どうしたいか」を手掛かりに、現象や目的から関連する資料や根拠を探します。
例えば、「設備のファンが」「異音と温度上昇を起こしているので」「過去の原因と対処内容を確認したい」という調査です。必要な報告書のファイル名を知らなくても、現象と調査の目的を入口にできます。
見つかった資料と検索経路を確認し、過去の担当者が何を手掛かりにどの資料を調べたかをたどります。そのうえで、根拠となる記述を原文で読み、今回の設備や運転条件にも当てはまるかを判断します。
資料から関連資料へたどる検索と、現象や目的から必要な資料を探す逆引き。その両方で、蓄積したつながりを再利用することが、検索経路を残す価値につながります。
ベテランが資料のどの記述に着目し、そこから何を調べたかは、次の担当者にとって大切な知識です。
ただし、本人にとって当たり前になっている判断を、改めて文章にまとめるのは簡単ではありません。日々の調査で表れた着眼点を、資料とのつながりから共有する方法を考えます。
例えば、「この記述を見たから、この言葉を検索した」「この型番が出てきたから、過去の故障報告を確認した」という行動には、何を手掛かりに次を調べたかが表れています。
AnnoLinkでは、こうした仕事の中で有用だった検索経路を残し、他の担当者が資料と根拠をたどれるようにします。
すべての暗黙知を検索経路だけで表せるわけではありません。技能や感覚、言葉にしにくい経験則などもあります。
しかし、「何を見ればいいか」「何を手掛かりに次を調べるか」という資料の検索に関するノウハウについては、検索経路を残すことが有力な手段になります。
この考え方に関係するのが、検索を通じた理解や、判断に至った過程を扱う研究です。
これらは、AnnoLink自体や製造業での導入効果を直接検証した研究ではありません。検索の過程にも再利用価値があるという研究を背景に、人が確認した検索経路と根拠を業務で共有することを目指しています。
研究の背景については、検索結果だけでは足りない理由を解説した当社のQiita記事もご覧ください。
報告書や図面に加えて、そこへたどり着いた手掛かりと根拠も残せば、次の担当者に調査の入口を渡せます。
AnnoLinkでは、業務に関係するフォルダを単位に分析し、人が原文を確認して有用と判断した検索経路を蓄積します。そのつながりを、関連資料をたどる調査にも、現象や目的からの逆引きにも生かします。
「前任者しか資料の探し方を知らない」「同じ調査を繰り返している」といった課題がある場合は、まず一つの業務を題材に、起点の資料・検索語・根拠・関連資料のつながりを整理してみてください。
一度誰かが調べたことを、次の仕事に生かす。そのために、検索経路を記録し、原文を確かめながら再利用していきます。
それがAnnoLinkの「検索経路の記録と再利用」です。
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