【事例解説】VRを活用した設計レビューの評価構造とは?―評価グリッド法による可視化

【事例解説】VRを活用した設計レビューの評価構造とは?―評価グリッド法による可視化

近年、VR(バーチャルリアリティ)を活用した設計業務の効率化が多くのメディアで注目されています。特に製造業や建設業など、設計レビューに関わる現場では、従来の紙図面やスクリーン投影によるレビューから、VRを使ったより直感的な確認手法への移行が進んでいます。

そこで今回は、日常的に機械設計や作業環境設計に携わるユーザーを対象にインタビューを行い、VRを用いた設計レビューの価値を「評価グリッド法」を用いて明らかにしました。

評価グリッド法とは?

評価グリッド法とは、人の評価構造を可視化する手法です。「良い・悪い」といった上位の抽象的評価と、そこにつながる具体的な評価項目(下位項目)との関係性をインタビューから導き出します。今回は、以下の3つの設計レビュー手法を比較対象としました:

  • VRを活用した設計レビュー

  • プロジェクターで図面を投影したレビュー

  • 紙図面を使った従来のレビュー

VR活用の評価構造(上図参照)

評価グリッド法の結果から、VRの導入が特に有効であると評価されたポイントは以下の通りです:

  • 作業姿勢や距離感・サイズ感を事前に確認できる

  • メンテナンス作業のシミュレーションが可能

  • 可動部分や巻き込みリスクの確認ができ、安全性が高まる

  • 図面だけでは気づけない問題を発見しやすい

これらの具体的な利点は、より抽象的な上位目標である「手戻りロスの削減」「作業効率の向上」「安全性の確保」と強く結びついています。

特に、「VR空間で実物大スケールを再現し、実際の作業環境を仮想的に体験できる」点が評価されており、これは従来の2D図面では実現が難しかったポイントです。たとえば以下のような確認がVRでは可能になります:

  • 支柱や機器の配置が作業の妨げにならないか

  • 操作盤への手の届きやすさ

  • 頭上の障害物による衝突リスク

手戻りの削減とプロジェクト全体の短縮へ

設計段階での認識不足による「手戻り」は、プロジェクトの遅延要因として非常に大きな問題です。VRを活用することで、図面だけでは気づけなかった問題点を早期に発見し、設計の精度を向上させることができます。その結果として、試作や施工後に発覚するミスを減らし、プロジェクト全体のリードタイム短縮につながります。

まとめ

VRによる設計レビューは、「安全性の確認」「作業効率の向上」「手戻り削減」といった設計業務における本質的な課題解決に直結する有効な手段です。特にメンテナンス作業の体験や空間感覚の把握は、従来手法では難しい部分であり、今後ますますVRの導入価値が高まっていくと考えられます。